Case Study事例紹介

大阪ガス株式会社

大阪ガスが推進するDXの将来への取り組み。AIベンチャーとの協業を選んだ理由

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「時代を超えて選ばれ続ける革新的なエネルギー&サービスカンパニー」を掲げる大阪ガス様は、2019年にHACARUSとAI・IoTソリューション共同開発に関する基本合意書を締結し、HACARUSが開発したスパースモデリング技術を活用したAIサービスの共同研究プロジェクトを進めています。HACARUSとタッグを組んだ経緯や意義、そして今後の協業の姿について、データ分析を担うビジネスアナリシスセンター所長の岡村智仁さんにお聞きしました。

<お話を聞いた人>

岡村智仁 氏
大阪ガス 情報通信部 ビジネスアナリシスセンター所長

2001年の入社以来、一貫してデータ分析業務に携わる。2018年、データ分析の専門組織ビジネスアナリシスセンターの所長に就任。データ分析チームのマネジメント、HACARUSなどベンチャー企業をはじめとするデータ分析/活用を基軸とした企業間連携などを指揮している。

 

 

ガス管の探査と不良品の検知。AIで効率化と品質維持

 

—まず、共同開発プロジェクトの中身について簡単に教えていただけますか?

 

地中に埋設されているガス管の探査と、製造ラインにおける不良品の検知について実証実験を行ってきました。

どちらも熟練の技能が必要な業務です。技術者の判断力をAIに学習させることで、ガス管の探査では地中のレーダー画像からガス管の位置を読み取ることができ、工場においては不良品を自動検知することが可能になります。

 

—AI導入によるメリットが大きいわけですね。

 

製造業を中心に、様々業界で熟練者の技術伝承が大きな経営課題になっています。現場の仕事はどうしても作業員の技術や経験に頼りがちになっている一方で、今後は作業員の高齢化に伴って経験豊富な技術者が現役を退いていくことが予想されるからです。

その様な課題に対して、AIを使うことで属人化の問題を解消し、合わせて業務効率を向上させることで、継続的にAIを活用したソリューション/サービスを活用してもらうようにしていきたいと考えております。

 

 

データ分析の先駆者。専門組織を立ち上げる

 

—今でこそデータ分析やDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性は盛んに叫ばれていますが、御社はそれ以前から積極的に進めていらっしゃいました。

 

ビジネスアナリシスセンターの前身となるデータ分析の専門チームが立ち上がったのは、2000年代前半のことです。

データの活用には歴史的に理解のある会社ですが、そうは言っても当時はまだデータ分析があまり認知されていなかった時代です。社内の理解を得るのは大変でしたね。いろんな部署に提案を持っていっても、「現場業務を知らない君たちに何が分かるの?」といった感じに門前払いを受けることがよくありました。

それでも少しずつ実績を積み上げ、現在はデータ分析で会社に貢献する組織として認知されるようになりました。社外からもデータ分析専門組織がうまく機能している事例として評価いただいています。

 

—長期経営ビジョン「Going Forward Beyond Borders 2030」では、先端技術の導入によって「お客さまの期待を超える商品・サービス」を提供し続けることを掲げていらっしゃいます。

 

私たちの事業は大きく「家庭用」と「業工用」にわかれます。

「家庭用」では、単にガス・電気を販売するプランだけでなく、お客様のライフスタイルや趣味・趣向に合わせた多様な料金メニューを揃えています。さらに、住まい全般のお悩みを解決する「住ミカタ・サービス」や、IoTに対応したガス機器「ツナガルdeシリーズ」の販売も積極的に進めています。

一方、「業工用」でも工場向けIoTサービス「D-Fire(ディーファイア)」など、ITを活用した新サービスをリリースしています。

 

 

HACARUSとパートナーシップを結んだ理由

 

—そういう中で、HACARUSのようなベンチャーとの協業にも積極的です。どんなメリットを感じていらっしゃるのでしょうか?

 

ITやデータ分析といったDXの業界は、技術革新が激しく、日々目まぐるしく進化しています。自社だけでそのスピードに対応するのは簡単ではありません。

特定の分野やニッチな技術力に精通するベンチャーとの連携は、専門力の獲得とそれを生かしたソリューション・サービスをいち早く開発するうえで必要不可欠なことです。自社だけでは思いつかないような画期的なビジネスやサービスが生まれる可能性を秘めています。HACARUSさんとの協業は、社内業務の効率化だけでなく、AIやIoTを使った新たなソリューションの開発も大きな目的です。

 

―HACARUSとは2019年に「AI・IoTソリューション共同開発に関する基本合意書」を締結し、共同研究を進めてきました。HACARUSとの出会い、その後の協業を通して、率直にどんな印象を受けられましたか?

 

みなさんと初めてお会いしたのは、2018年でしたね。前・ビジネスアナリシスセンター所長の河本薫(現・滋賀大学データサイエンス学部教授)が執筆した書籍『最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか』を読んでいただいた藤原(健真)社長から、「ぜひお会いしたい」とお声がけいただいたのが始まりでした。

それから何度か打ち合わせをさせていただく中で、HACARUSのみなさんの強い思いや姿勢に触れ、「この会社は信頼できる」「一緒にいいソリューションを開発できる」と思う様になりました。

それは、少量のデータで識別や予測が可能になるAI技術そのものはもちろんですが、みなさんが率直にいろんなご提案をしてくれて、腹を割って話し合いができたからです。AIの導入によってもたらされるメリットをわかりやすく伝えていただくとともに、逆にAI以外の手段で取り組むべきことも教えていただきました。決して自社のサービスを前のめりに主張するのではなく、私たちが抱えている課題に対して、他社の技術も踏まえたうえでの客観的な意見や前向きな提案をしてくれたのです。そこから信頼関係が醸成され、共同開発へと動き出していきました。

私たちは今年(2021年)3月、2023年度までの中期3カ年経営計画「Creating Value for a Sustainable Future」を発表しました。そこではベンチャー企業との協業の必要性に触れています。HACARUSさんをはじめ、これからベンチャーとの協業はさらに加速していくと思われます。

 

 

DX推進へ、社内の理解を得る方法とは

 

—少し話は戻りますが、データ分析について社内の理解を得るのが大変だったとお話されていました。導入に前向きではない人を説得し、理解を浸透させるにどうしたらいいでしょう?

 

新しい施策には一定の反発があるものです。そこを乗り越えて理解を浸透させるために、私たちが大事にしているのは、まずアドバルーンをあげることです。

小さくてもいいので、1つずつ成功体験を積み上げていくのです。そうすると、徐々に周りのチームや部署も無視できなくなってきます。

例えば、あるチームがAIを使った業務改革で成果を出したとしましょう。すると、それを知った周りのチームも「うちもできるかも」と触発されるのです。そうやって前向きなマインドを少しずつ全体に浸透させていくことが重要だと思います。

 

—小さな成功体験を横展開させるのですね。

 

同時に、全面的に賛同してくれる人をいかに巻き込むかも大事なポイントです。どんな部署にも、新しい提案に興味を持ってくれる人たちが必ずいます。前向きな人たちにうまく伴走し、成功体験をつくりながらそれ以外の人たちに間接的に訴えかけていくことが効率的であると感じています。

 

 

出資で連携強化。新たなソリューション、ビジネス創出へ

 

—今後、HACARUSに期待することや、一緒に挑戦していきたい領域はありますか?

 

現在取り組んでいるプロジェクト以外でも、あらゆる領域でいろんな可能性を探っていきたいですね。そのためにも、昨年(2020年)4月に御社に出資したのは私たちにとって非常に大きなニュースでした。これからさらに協力関係を深めていくフェーズに入ったからです。

HACARUSさんは現在の共同研究で活用している画像解析技術だけでなく、ほかにも様々なシーズを手がけられていますよね。引き続き尖った技術開発を進めていただくことを期待していますし、ぜひ私たちに積極的に提案していただきたいですね。まだ世の中にないソリューションを一緒に開発し、新しいビジネスを生み出せることを期待しています。

私たちエネルギー会社にとって、お客様へのサービスの安定供給は絶対に譲れない根幹にあるものです。先進的な技術開発だけでなく、新しいソリューションを安定的に提供するための協力体制も強化していきたいですね。

 

 

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