私たちが無意識に行っている「歩く」という動作。ヒューマノイドロボットにとっては、最も基本的でありながら、最も難しい動作のひとつです。
HACARUS Humanoid Labでは、フィジカルAIやヒューマノイドの社会実装を見据えて、基本動作を一つずつ実機で検証しています。シリーズ第1弾では、すべての動作の土台となる「二足歩行」と「回転運動」を取り上げます。中国Unitree Robotics社のヒューマノイド「Unitree G1」を使い、どのような仕組みで歩いているのかを映像とともに深掘りします。
▼ なぜ二足歩行は難しいのか
四足や車輪のロボットと違い、二足歩行では片足で立つ時間が必ず生まれます。体を支える面積がとても小さいため、そのままでは倒れてしまう、本質的に不安定な状態です。
ロボットの歩き方は、大きく2つの考え方に分けられます。
- 静的歩行:重心を常に足裏の上に保ちながら、ゆっくり足を運ぶ歩き方。安定しますが、速度や滑らかさに限界があります。
- 動的歩行:あえて前に倒れ込みながら、次の一歩で体を受け止める歩き方。人間の歩行もこちらで、「倒れ続けながら、倒れ切らない」制御が求められます。
▼ 歩行を支える4つの要素
- 重心の移動:左右の足に体重を移すタイミングと量
- 支持脚と遊脚の切り替え:体を支える脚と、前に出す脚の役割交代
- 接地の衝撃の吸収:足が床に着く瞬間の衝撃を、足首・膝・股関節で逃がす動き
- 上半身のバランス:腕の振りや胴体のひねりで、脚が生む回転の力を打ち消す動き
▼ 回転運動はなぜ難しいのか
その場での方向転換は、前に歩くより難しい場面があります。体を回そうとすると足裏と床の摩擦が抵抗になり、無理に回ると滑ったり姿勢を崩したりするためです。多くのヒューマノイドは、小刻みなステップを踏み替えながら少しずつ向きを変えます。動画では、【ステップの刻み方/回転中の上半身の動き】に注目してください。
▼ Unitree G1はどう歩いているのか
Unitree G1は、身長約1.3m・体重約35kgの小型ヒューマノイドです。脚の関節を電動モーターで駆動し、体の傾きを測るIMU(慣性計測装置)と各関節のセンサーの情報をもとに、姿勢を高い頻度で調整しながら歩きます。
G1のような近年のヒューマノイドの歩行制御には、強化学習が広く使われています。シミュレーション空間の中で何百万回も歩行を試行錯誤させ、転ばずに歩ける動かし方(制御ポリシー)を学習させてから、実機に移す手法です(Sim-to-Real)。人がひとつひとつ動作をプログラムするのではなく、AIが「歩き方」を身につける。これがフィジカルAIの代表的な姿のひとつです。
▼ 動画の見どころ
- 前方歩行:カメラに向かってまっすぐ歩いてくる場面です。膝を軽く曲げた姿勢を保ちながら、左右の脚に体重を移しつつ一定のリズムで前に進みます。腕も脚の動きに合わせて小さく振れており、上半身でバランスを取っている様子が分かります。
- 足元のクローズアップ:膝と足元に寄った映像です。足がカーペットに着く瞬間に膝の角度が変わり、着地の衝撃を関節で受け止めながら、支持脚と遊脚が入れ替わる様子を間近で確認できます。
- 後方歩行:背中を向けたまま後ろ向きに歩く場面です。進む方向を目で確認できない状態でも、前方歩行と同じように姿勢を崩さずに歩き続けます。人間でも難しい後ろ歩きを、安定して行っている点に注目してください。
- 回転:その場で向きを変え続ける場面です。一度に大きく回るのではなく、膝を曲げて重心を低く保ったまま、左右の足を小刻みに踏み替えながら少しずつ向きを変えていきます。約4秒で1周するペースで、3周以上連続して回っても姿勢を崩しません。
▼ 動画
▼ 現場で使うために見えてきたこと
前進・後退・その場での旋回という基本の移動が、カーペット敷きの室内で安定して行えることを確認しました。特にその場での旋回は、方向転換のために広いスペースを取れない狭い通路や作業エリアでの活用につながる動きです。一方で、今回はさえぎるもののない平らな床での検証にとどまっています。今後は、床材の違い、段差や傾斜、人や物が行き交う環境での歩行など、実際の現場に近い条件での検証を進めていきます。
▼ HACARUS Humanoid Labについて
HACARUS Humanoid Labは、ヒューマノイドの社会実装を見据えたフィジカルAIラボです。実機、検証環境、技術支援を一体で提供し、企業の皆さまの初期検証を支援しています。「自社の現場でヒューマノイドが動けるか確かめたい」といったご相談をお待ちしています。
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株式会社HACARUSについて
『未来を造る人に 次世代の「はかる」を』というミッションを掲げ、少ないデータで、抜本的な問題解決につなげる「AIソリューション」を提供しています。2014年の設立から数多くの企業の問題解決に貢献してきた経験と独自の技術力で、人の知見を資産化し、オペレーションの効率化・省人化を成功させます。データの取得から既存システムとの連携までを一貫して支援し、人間とAIが共存する未来の実現に取り組んでいます。
- 本社:京都府京都市中京区高宮町206 御池ビル8階
- 設立:2014年1月
- 代表取締役CEO:染田 貴志