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WebSummitに出展してみて感じたこと

ハカルス代表の藤原です。世界最大のテック系カンファレンスの1つであるWebSummitに、ハカルスとして単独でブース出展しました。これから海外進出する日本のスタートアップのために、忘備録として書いておこうと思います。

まずは総括から先に述べると、こんな感じ。

  1. リスボンのメシは、ヨーロッパの中でもレベルが高い。
  2. ポートワインは、美味しい。甘いけど食事にもあう。
  3. タクシーで忘れたスマホが返ってきた。奇跡やと思う。

以上、開催地のリスボンで自分が感じたことでした。m(_ _)m

 

~~~さて、ここからが本題~~~

 

メシの旨さや、落し物がちゃんと返ってくるというのは、ある種の生活水準の高さと治安の良さを表していると真剣に思っていまして、WebSummitがリスボン市と今後10年間はカンファレスを同市内で開催すると契約したのも納得できます。

今回、ハカルスはALPHA枠というグループでブース出展させてもらいました。経産省・JETROが実施しているJ-Startup枠もあったんですが、日本の他のスタートアップに交じってone-of-themとして露出するのは京都企業っぽくないというか、個人的に好みではないので、あえて単独で出展することにしました。下記は、ブースっちゅーても、デスクの一角やけど、弊社の展示スペースです。

CTOの染田とVP of Productのマーセル (染田はヨーロッパ初体験)

 

ALPHA枠は、投資額$1M以下でプロダクト開発段階のスタートアップが該当します。その次に、投資額$1M~$3Mでプロダクト開発済みのBETA枠があって、最後に投資額$3M以上で国際展開済みのGROWTH枠があります。

ハカルスは、申請時点ではギリギリALPHA枠やったんですが、その直後に2.7億円のシリーズA資金調達を完了しているため、実質的にはBETAもしくはGROWTH枠という位置づけです。もし来年も出展するとしたら、たぶんGROWTH枠やと思います。

実はハカルス、2016年にも1度ALPHA枠でWebSummitに採択されてるんですね。当時は、申請して採択されたものの、金銭的な余裕がなかったので、見送ったという経緯があります。以下、そのエビデンス。

Davos for Geeks (ヲタクのためのダボス会議)と当時ブランディングしていたレアな証拠

 

ということで、今回は3年越しの挑戦というか、ようやく海外進出の準備が整った感じで、なんとも感慨深いものがあります。ブースでは、ディープラーニングを使用せずにリアルタイムで顔認識と人物カウントを行うAIのデモを展示しました。元々、ARMベースのエッジ端末向けに作ったものですが、今回はPCに移植して動かしました。

自社のブースに何人立ち止まったかをカウントする画像解析AIのデモ

 

ブースに来る人にハカルスのビジネスや提供サービスの説明をするわけですが、とにかく驚いたのが女性の来場者の多さ。自分、今までこんなに女性が多く参加するテック系カンファレンスは体験したことがないので、ここは女性の扱いに慣れているヨーロッパ人のマーセルに活躍してもらうことにしました。次から次へとやってくる女性を、サラリと捌く彼の姿にはポテンシャルを感じざるを得ません。

事業会社、VC、政府関係者など幅広いバックグランドの女性が来場していた

 

来場者とコミュニケーションしていて感じたのは、他のカンファレンスと違って、実のあるディールを持って帰ろうと意図的に努力している人が多いところが特徴やと思いました。日本国内の展示会でよく見かける、大手企業のなんちゃら部門の物見遊山なオジサン連中は、ほとんど見かけなかったです。

自分が話した事業会社のCVC担当者は、周りの目を気にせずに「こういう課題がある。キミのところのAIで解決できるか。解決できるなら〇〇〇千ドルをPOCに払う用意がある。どうだ?」みたいな話を、その場で持ち出してきました。この辺りのダイナミックさというか、何でも本社に持ち帰って、さらにNDAを結ばないと具体的な話ができない日本のCVCとの違いを明確に感じました。

たぶん、こういう場所なので他の会社にディールを持っていかれないように、即決即断で商談を進めようと意識的に動いているためだと思います。聞くと、その担当者はWebSummitにもう4回も来ているそうな。まぁ、慣れたもんです。

 

ブースでの展示と並行して、自分は経営者としてVCとの面談を幾つかこなしました。WebSummitのシステムを通じてマッチングされる仕組みで、VCの方から「このスタートアップと面談したい」とリクエストを飛ばして、それをスタートアップが了承することで面談が成立します。会場では、下記のようなスケジュールが表示されており、時間になったら指定のテーブルに着席してVCとの面談を始めます。もちろん英語で。

こちらも先のCVC担当者と同じく、短い時間でなんとか良いリードを獲得しようと、真剣に商談に臨んでいるスタンスがうかがえました。上から目線のVCが一人もいなかったのは、bad reputationが運営者であるWebSummitにフィードバックされる仕組みがあるためだと感じました。おそらく、起業家の時間を無駄に浪費するタイプのVCは、速攻でWebSummitに出入り禁止になるんやろうと思います。

VCとの商談エリアでは10テーブル程度の商談が同時並行で進められる

 

個人的に興味深いと思ったのは、ヨーロッパ各国の政府機関のブースで、それぞれ地場の強みをアピールしてスタートアップを誘致しようとしている点でした。これ、日本国内の展示会やと、〇〇県とか〇〇市とか、日本版なんちゃらバレー計画のブースになると思うんですが、ここはヨーロッパ、政府機関もインターナショナルです。

自分が参加したドイツのブースでは、外国人としてドイツに移住して、完全にアウェイの状態で起業したにも関わらずドイツ政府から手厚い支援を受けたことで事業をスケールさせることに成功したアジア人ファウンダーの話をしてました。ちなみに、ミュンヘンはビール天国であるというアピールは、相当刺さりました。今すぐにでも移住したい気分です。

真面目な話だけでなくカルチャーもしっかり発信する政府関係者

 

そろそろ、まとめましょう。WebSummitに来るべきスタートアップはズバリ以下のタイプやと思います。

  • IT、AIなどソフトウェア系
  • 米国進出はちょっとしんどいのではと気づいた系
  • 無理やり社内の公用語を英語にするのではなく、真の意味で従業員のダイバーシティを強化したい系

物理的なモノの移動を伴わないIT系スタートアップは、やはり真っ先にグローバル化を考えるべき。個人的に、世界中につながるインターネットのメリットをわざわざ殺してまで、日本というLAN(Local Area Network)の中だけで商売する日本のスタートアップはナンセンスやと思ってます。もちろん、日本で事業を営む日本企業であるというアドバンテージは活かすべきやけど、ある程度のフェーズ以降は、世界で戦うべき。

米国進出については、自分がずっとアメリカで暮らしていた経験に基づく信条なんですが、はっきりいってアメリカ人になりきらない限りは、アメリカという市場では勝てんです。日本人の価値観、考え方、商流、スピードを1ミリでも持ち込んだら、それらがディスアドバンテージになるのがアメリカ。一方で、ヨーロッパという市場は、国と地域によっては日本発であるアドバンテージが無くはないです。

余談ですが、ハカルスが拠点にしている京都は、永住するアメリカ人の数は少ないですが、イギリス・フランス・ドイツあたりのヨーロッパ人の永住率は、そりぁ高いものがあります。実際、「KYOTO」の名前を出すだけで、ハカルスへの入社や京都への移住に興味を示す人材に、ヨーロッパではよく会います。

 

逆にWebSummitに来てもあまり意味がないスタートアップというのは、そもそも経営者(社長)がリスボンに来てないとか、担当者が満足に英語でコミュニケーションできないとか、プロダクト・サービス・ウェブサイトが日本語でしか用意されてないとか、そういう類です。そういうスタートアップは、事業のグローバル化や真の意味でのダイバーシティは社内に醸成されんと考えます。

以上、WebSummitに出展してみて感じたことです。ALPHA枠に採択されることは、それはそれで敷居が高いチャレンジですが、護送船団方式のone-of-themで出展するのではなく、ぜひ自力で世界に飛びてみてはいかがでしょうか?

Kenshin Fujiwara

株式会社ハカルスの代表。米国カリフォルニア州立大学でComputer Scienceを学び、帰国後Sony Computer Entertainmentに入社。PlayStationのGPU向けグラフィクス・ライブラリの開発等を担当。時代は代わり、GPUがディープラーニングに使われるようになるものの、ハカルスではGPUに依存しないスパースモデリング技術を使ったAI開発に注力するため、GPUの知識は全く活かせていない。医療と産業分野へのAI応用に強い関心あり。