
1. はじめに
皆さんこんにちは、ハカルスでエッジデバイス開発を担当している白石です。
工場等の過酷な環境でも耐えられるエッジデバイスであり、外観検査等を行う産業向けAIの導入先として期待される、RevPi Core 3を購入/セットアップしてみました。
2. RevPi Core 3とは ?
ドイツのKUNBUS社が開発している、産業用ラズベリーパイ Resolution Pi(以後RevPi) のモデルキットの一つとなります。
KUNBUS社 RevPi Core 3紹介サイト
外観と大きさ
日本国内では、ハーティング社が販売しています。
ハーティング社販売サイト
前述の紹介サイトにもありますが、主なスペックは以下となります。
プロセッサ | Broadcom BCM2837 |
コア数 | 4 |
クロック数 | 1.2GHz |
RAM | 1GByte |
eMMC Flash Memory | 4GByte |
初期OS | Debian Stretch (2018/07/17) |
動作温度範囲 | -40~+55 ℃ |
特徴としては、産業用とあるだけ動作温度範囲が広く、またストレージとしてSDカードではなくeMMC(embedded Multi Media Card)を採用している点があります。
ストレージ4GBと聞いて、何となく予測はつくかと思いますが、この小さい容量への対処に後々苦戦します。
3. 中身を確認する
まずRevPi Core 3の中身を確認するため、ケースを外してみました。
正面
裏面
RevPi Core 3のボードは、Rasberry Pi Compute Module 3が組み込まれた、KUNBUS社独自のCompute Module Kitで構成されている様子です。
3.1 Raspberry Pi Compute Module 3 とは?
Raspberry Pi Compute Module 3 は、組込機器向けにRaspberry Piを搭載するためのモジュールボードとなります。
以下のヒートシンクが付いているメモリモジュールのようなものが Compute Module 3であり、SoCである BCM2837、ストレージであるeMMC 4GBを備えています。
3.2 RevPi Core 3の Compute Module Kit
Compute Module 3自身は電源モジュールやUSB等のインターフェースを持たないため、Compute Module 3の接続先となる基盤 Compute Module Kit側にて、これらを補います。
RevPi Core 3に搭載されているCompute Module Kitは、以下のインターフェースに対応しています。市販のRaspberry Piで搭載されているカメラモジュールのコネクタや無線モジュールは存在しません。
- Micro USB (eMMCへの書き込みに使用)
- USB Type-A 2.0 x 2
- RJ45 有線LANポート
- Micro HDMI
- PiBridgeコネクタ x 2
4. RevPi Core 3のセットアップ
4.1 電源の接続
RevPi Core 3セットアップにて難しいのは、電源モジュールの接続にあります。
ラズベリーパイといえば、USBで電力供給できるお手軽さが特徴ですが、RevPi Core 3の場合電源は24V DCであり、ACアダプタ等を用意する必要があります。
電源接続については、以下の方のブログを参考にしつつ、今回は秋月電子通商からDCジャック付きケーブルと24V ACアダプタを購入/使用しました。
参考にさせて頂いたブログ: https://www.1ft-seabass.jp/memo/2018/10/09/revolution-pi-24v-dc-memo/
使用した電源モジュール
DCジャック付きケーブル – RevPi Core 3接続画像
上のようにRevPi Core 3のx4コネクタ左端にDCジャック付きケーブルのプラス側(白線)を、左から2番目にマイナス側を接続しました。
この状態でケーブルとACアダプタを繋ぐと、Power LEDが点灯し、micro HDMI に繋いだディスプレイに起動画面が表示されます。
4.2 最新OSをeMMCに書き込む
初期状態でも、eMMCにOS(Debian Stretch 2018/07/17)がインストールされていますが、今回は最新OSをKUNBUS社からダウンロード、eMMCに書き込みました。
4.2.1 最新OSのダウンロード
KUNBUS社が提供している最新OSイメージとして、stretch / jessieが存在します。
stretchと比べjessieの方が最適化されている特徴がありますが、容量の問題から今回はstretchの最新Verをダウンロードしました。
なお、ダウンロードのためにはKUNBUS社のアカウントを作成/ログインが必要となります。
stretch ダウンロードサイト : https://revolution.kunbus.de/shop/en/stretch
jessie ダウンロードサイト : https://revolution.kunbus.de/shop/en/jessie
4.2.2 OSイメージの書き込み
OSイメージは、Win32 Disk Imagerによって micro USB経由でeMMCに書き込むことができます。
書き込む手順はRevPi Core 3の スタートアップガイドや、ハーティング社からRevPi Core 3を購入した際、添付されているマニュアルにあります。
このため、本記事では手順を省略します(*)。
*) 私の環境で一点だけ確認した問題として、Win32 Disk ImagerでeMMCに書き込んでいる途中、Windows側が”eMMCを認識し、”ドライブ:* を使うには、フォーマットする必要があります”とポップアップすることで、書き込みが失敗することがあります。
この場合は、再度書き込みを実施すれば正しく完了します。
4.2.3 初期設定について
OS書き込み後の初期設定(パスワード設定やGUIモードの有効化等)についても、前述のスタートアップガイドやマニュアルにて解説されているため、本記事では手順を省略します。
5. RevPi Core 3 設定用 Web画面を開く
初期設定完了後、GUIモードで起動すると以下のデスクトップ画面が表示されます。
画面のメニューから、プログラミング – RevPiと選択することで、以下のRevPiの設定画面を開くことができます。
admin / 設定したパスワードでログインできます。
上記の操作は、アプリケーションを実行しているわけではなく、実際はブラウザでローカルIPアドレスを開いてWebサイトを開いているだけです。
このため、別PCのブラウザからRevPi Core 3のIPアドレスを指定して設定画面を開き、RevPi Core3の設定を変更することが可能です。
設定画面からは、SSHやTeamViewer、PiCtory(PiBridgeで繋がった別RevPiを管理するツール)等のサービスを設定することができます。
詳細はスタートアップガイド 内のSoftware/PiCtoryの項目を参照下さい。
サービス設定画面
PiCtory設定画面
6. 容量削減に挑戦
前述の通り、RevPi Core 3のストレージは4GBのみであり、初期設定後に日本語設定を行った場合、残り1GBもありません。
[初期設定後の残り容量]
pi@RevPi12768:~ $ df -mh
ファイルシス サイズ 使用 残り 使用% マウント位置
/dev/root 3.5G 2.4G 941M 73% /
対策として、不要パッケージの削除やUSBストレージを接続する等の一般的な方法もありますが、
RevPi用のOSカスタムツール imagebakery を使用する方法もあります。
KUNBUS社の技術フォーラム では、このimagebakeryにより空き容量を2GB程まで増やせたという話もあります。
imagebakeryの使い方は、GithubプロジェクトのREADMEにあります。
実際私の環境でも”2019-04-08-raspbian-stretch”にimagebakeryを適用し、軽量OSイメージを作成してみましたが、残念ながら正しく動作させるまでには至りませんでした。
7. まとめ
今回はRevPi Core 3のセットアップまで行いました。
電源モジュール接続の敷居の高さやストレージ容量の問題はあれども、SSHやWeb画面等外部からRevPi Core 3を操作する環境が初期状態から用意されており、遠隔から容易に操作できるようになっています。
また、ストレージの問題について、2019年内に32GB eMMCモデルが発表される噂もあるため、より導入が容易な産業向けエッジデバイスとして期待できます。
次のステップとして、社内で開発しているAIをRevPi Core 3に載せて外観検査等を実施し、どれくらいのことまで可能か検証していきます。