Case Study事例紹介

第一工業製薬株式会社

24時間稼働の排水処理施設を守る「AI早期警戒システム」

  • 導入事例
  • 製造業
24時間365日稼働する排水処理施設において、異常の兆候をいかに早く捉えるかは、環境保全と安定操業の両立に直結する重要な課題です。第一工業製薬株式会社では、屋外環境下でも機能するAIによる常時監視の仕組みを導入し、排水処理における異常の早期発見と判断の標準化に取り組んできました。本事例では、同社大潟工場におけるAI早期警戒システム導入の背景と効果について紹介します。(インタビュー:大潟工場 Tさま)

異常の予兆を捉え、環境リスクと操業停止を未然に防ぐ

 

お客様の声

  排水処理は24時間待ったなしの現場です。異常に気づくのが遅れれば、環境への影響だけでなく、工場の操業停止という経営リスクに直結します。AIによる常時監視で『予兆』を捉える仕組みが、私たちの安心と安全を支えています。

 

導入の背景

第一工業製薬株式会社は、環境負荷低減を経営の重要課題(マテリアリティ)の一つに掲げ、持続可能なモノづくりを推進しています。その要となるのが、工場から排出される水を浄化する「排水処理施設」です。

しかし、微生物の働きを利用する排水処理は非常にデリケートなプロセスです。24時間365日稼働し続ける中で、処理槽の状態は刻一刻と変化します。従来の管理体制には、構造的な課題がありました。

・発見の遅れによる重篤化
現行プロセスでは異常値(pHや汚泥の状態悪化)検出の時点では、すでに状況が悪化しているケースが多く、回復させるために長い時間と労力を要していました。最悪の場合、排水基準超過を防ぐために工場の生産ライン自体を止めなければなりません。

・監視の限界
担当者が定期的に見回りを行っていますが、常時張り付いていることは不可能です。夜間や休日など、人の目が届きにくい時間帯のリスク管理が課題でした。

 

導入のポイント

浮遊物の異常を検出

早期発見のためには、水面の様子(浮遊物や泡の状態)をカメラで監視することが有効ですが、屋外にある排水処理施設特有の難しさがありました。

1.浮遊物の移動
水面のスカム(浮遊汚泥)や油膜は軽く、風向きによって常に移動します。「いつも同じ場所に現れる」わけではないため、定点センサーでは捉えきれません。

2.環境要因のノイズ
雨や雪が降ると水面が波立ったり、白く映り込んだりします。これらを異常と誤検知せず、本当に検知すべき「悪性の浮遊物」だけを見分ける必要がありました。

3.良性・悪性の判断
浮いているものが全て異常なわけではありません。処理過程で発生する無害な泡と、トラブルの予兆である異常なスカムを識別する高度な判断力が求められました。

 

プロジェクトのプロセス

初期段階では、実際の処理施設の状況をもとに、風や天候の影響を含めた環境下で、カメラ映像による判別が可能かを検証しました。

その結果を踏まえ、現場での利用を想定し、継続的な映像監視によって異常の兆候を把握できるかを評価しました。

これらの検討を通じて、屋外の排水処理施設においても、映像を活用した異常検知の実用性を確認しています。

 

導入効果と今後の展望

本プロジェクトにより構築された「早期警戒システム」は、排水処理管理のあり方を変えつつあります。

・発見の遅れによる重篤化
人が巡回していない時間帯でもAIが監視を続けるため、異常の「予兆」段階での対処が可能になりました。これにより、大規模なトラブルや操業停止のリスクが大幅に低減しました。

・判断の標準化
担当者の経験則に頼っていた「良性・悪性」の判断が、AIによって客観的な基準で判定されるようになり、属人化の解消につながっています。

第一工業製薬では、このシステムを環境管理の要として本格運用に乗せるとともに、今後は蓄積されたデータを活用し、異常発生の原因分析や運転条件の自動最適化など、さらなる環境負荷低減に向けた取り組み(DX)を加速させていく計画です。

 


 

第一工業製薬株式会社

事業内容:界面活性剤を始めとする各種工業用薬剤や、健康食品などのライフサイエンス関連製品の製造・販売
創立:大正7年8月
本社所在地:京都府京都市南区東九条上殿田町48番地2
代表者:代表取締役社長 山路 直貴
資本金:88億95百万円
URL:https://www.dks-web.co.jp/

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